Bonjour〜!!
南仏(なんふつ)マルセイユ 在住のJAGAKOです!
本日は、スペインを代表する画家でもあり、晩年はマルチアーティスト として、いろいろな表現技法を探求した「Salvador Dalí(サルバドール・ダリ)」の遺作が多数残されているスペインの「ダリ劇場美術館」をご紹介します。
多才な才能を持ち、世界中から注目を浴びた天才夢想家「ダリ」とは?
「Salvador Dalí(サルバドール・ダリ)」は、1904年5月11日にスペインのカタルーニャ北部フィゲラスで、裕福な公証人の息子として生まれました。
絵画という枠組みを超え、生涯を通じて、精神分析、物理学、映画やファッション、宗教など様々な分野に興味を持ち、その研究を通じて、自らの製作手法を広げ、才能を開花させていきました。
青年時代に印象主義、キュビズム、新古典主義による表現を試みたのちに、シュルレアリスム運動に参加し超現実という世界を探求するシュルレアリストとして、豊かな才能を最大限に発揮し、特に睡眠時の夢からイメージされる世界が一般的には非現実的だとしても、それも現実だと捉え描写したり、無意識の中から生み出されるの独自の作風を発展させ、その個性的な芸術作品をテレビやマスコミで注目されるために奇抜な演出などで人の目を惹き付け、絶大な人気を集めるように仕向けた戦略家でもあります。
そして、幼少期から晩年まで芸術の限界に挑み続け、その才能を惜しまれつつ、1989年1月23日に生まれ故郷フィゲラスで生涯を遂げました。
ダリの凄いところは、画家、彫刻家など、一つの分野を追求するのではなく、時代の背景や移り変わりと共に順応かつ、溢れ出る好奇心によって生み出される創作意欲で、数多くの分野で活躍したマルチアーテストです。
例えば、ファッション誌「VOUGE」の表紙や今でも目にするデザインの中でチュッパチャップスの包み紙もダリがデザインしました。
そして、ダリ独自のイマジネーションが発揮されたジュエリーのデザインも手がけています。
そんな、イマジネーションに富んだ表現活動を行い、画家、彫刻家、版画家、舞台美術家、映画製作者、文筆家、そして、劇作家など、常に人々を驚かせるパーソナリティーを各方面で発揮し、芸術史上、最も傑作品を生み出した20世紀最高の芸術家の一人になったことです。
そして、世界に名をはせる個性的な思想やアイデンティティは、ダリの前に生まれた兄が死に「サルバトーレ」という名をそのまま受け継いだことで「自分は死んだ兄の変わり・・・」なのだと、生涯ダリの中で消えることのないトラウマになりました。
でも、だからこそ、その少年期のトラウマを暗喩的に表現し続けたことで、反逆児的なパーソナリティ(人格)は、他者には考えつかない様な発想力と素晴らしい才能、そして行動力で独特の世界観や表現様式を確立し、シュルレアリスム運動を自らモデル化した体現者でもあります。
●印象主義・・・現実的な色彩の視覚効果を追究する技法
代表印象派画家: ポール・セザンヌ、クロード・モネ、ピエール・オーギュスト・ルノワール
●キュビズム・・・西洋美術で当たり前とされていた遠近法や、単一の視点から描くのではなく、複数の視点から見たイメージを、一枚の絵の中に集約した新たな美術表現。20世紀初頭にパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって革新的な技法として生み出された。
代表画家:パブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラック
●新古典主義・・・ それまでの装飾的・官能的なバロック、ロココの流行に対する反発し、18世紀中頃から19世紀初頭にかけて、西ヨーロッパで建築・絵画・彫刻など美術分野で支配的となったモダニズム(芸術思潮)。特にギリシャ芸術が模範とされた。
新古典主義を代表する画家:フランソワ・ジェラール、ジャック・ルイ・ダヴィッド、ドミニク・アングル、アントワーヌ・ジャン・グロ
●シュルレアリスム(超現実主義)・・・第1次世界大戦後、フランスで起こった作家(詩人)アンドレ・ブルトンを中心とする文学・芸術運動。
「シュルレアリスム(現実を超えた現実)」を基に、不気味で驚愕、ぞっとするような恐ろしさを与えるモノ・事を「非現実的・現実離れした」っという意味合いでいつしか「シュール(だね)」っと表現される様になった。(※本当の意味合いは当時とは違う見方をしていました)
シュルレアリスト代表の画家:サルバドール・ダリ、パブロ・ピカソ、ジュゼッペ・アルチンボルド
スペイン北部のフィゲラスにある「ダリ劇場美術館」とは?
「Dalí Theatre and Museum(ダリ劇場美術館)」は、「世界最大のシュルレアリスムのオブジェ」と描写され、ダリ作品の中でも初期の芸術活動から晩年に至るまで、幅広い作品群と最高傑作が集約された美術館です。
何よりもマルチアーティストとして活躍した様々な芸術作品約1,500点を楽しむ事ができます。
スペインで最も有名で魅惑的な「ダリ劇場美術館」は、バルセロナから車で約2時間、公共交通機関で約1〜2時間のスペイン北東部、フランスとの国境に近い、カタルーニャ州のFigueres(フィゲラス)という町にあります。
●住所:Gala-Salvador Dalí Square 5 E-17600 Figueres Catalonia
●電話番号 +34 972 677 500
●入場料金:大人14€ / 学生・シニア(65歳以上の年金受給者)9€
※料金にはダリ宝石美術館の入場料も含まれます
※グループ割引あり
※2021年現在
●営業時間:都合により変更あり(詳しくは公式ホームページより)
●休館日:都合により変更あり(詳しくは公式ホームページより)
●アクセス方法:公共交通機関をご利用の場合、フィゲラスには駅が2つあります。
・バルセロナから特急電車AVEが到着するFigueres-Vilafant(フィゲラス・ヴィラファント )駅からは徒歩約20分
・バルセロナから快速電車等が到着するFigueres(フィゲラス)駅からは徒歩約15分
「ダリ劇場美術館」の見所とは?
ヨーロッパ内にある美術館の中でも外観からすでに奇抜で人を惹きつける力を放つ「ダリ劇場美術館」は、ダリ自身が計画から建設まで携わり、全精力をかけて完成した美術館です。
この美術館は元々、フィゲラスの旧市立劇場の遺跡の上に建てられました。
スペイン市民戦争の時に破壊され、その後何十年も倒壊したままになっていた状態から、1960年にダリとフィゲラス市長や市議会の協力の元、再建することが決定し、1974年9月28日に「ダリ劇場美術館」としてオープンしました。
なんと!14年!!
その集大成は、魅力的でユニークな世界へ没頭させてくれます!
それから1980年代の半ばまで増築され今現在の形になりました。
屋根の上に卵が乗っていたり、壁一面にクロワッサンのオブジェが張り付いていたり、ダリのユーモアと生涯を通じて執着し続けたモチーフが特徴的です。
そこには、迷宮的なシュルレアリスムのオブジェの数々により「来場者が演劇的な夢世界を楽しめるように」と、いうダリの思いが反映されています。
この「ダリ劇場美術館」は、すべての年代の絵画や素描以外に彫刻、立体的なコラージュ、写真、インスタレーション (室内空間全体を作品として体験させる芸術)、その他、シュルレアリスム(超現実主義)を象徴するオブジェなど、ダリの想像力から生まれた多才なコレクションや珍しい作品が展示されています。
そして、同じ敷地内には、この美術館のチケットで入れる「ダリ宝石美術館」があります。
2つの美術館をじっくり見学するなら最低2〜3時間は欲しいところです。
もし、バルセロナから移動される場合は、移動時間なども含めて半日は予定をみてスケジュールを立てると良いと思います!
私たちは、朝からお昼過ぎまで、遊園地で遊び、夕方の入館予約だったのと、全く興味のない息子と夫が一緒だったので、全然ゆっくりと回れませんでした。(悲)
一、ダリ自身が著名な演劇画家だったから
二、旧市立劇場の真正面にある教会でキリスト教の礼典の一つである洗礼”バプテスマ”を受けたから神聖な区域だから
三、ダリが最初の絵画展をおこなった場所が旧市立劇場のホールだったから
ダリ劇場美術館のまずはココを押さえて!魅惑の内部とは?
「ダリ劇場美術館」の奇抜な外観をぐるりと見物した後は、入口でチケットを購入(事前予約済みの場合はすんなり入館できます)して、いざ来館です!!
《入口を発見!》
《外観とはまた違う入口も個性的です!》
来館してすぐに、ダリの上品で個性的な内観に惹きつけられます。
そして、まず初めにダリの初期の作品などを見ながら、吹き抜けの中庭に辿り着きます。
180度、ぐるりと見どころいっぱいな中庭アートは、ダリの想像力豊かな思想に触れることができます。
黄金色のマネキン?ゴールデンウーマン??は、よく見るとそれぞれポーズが違い躍動感があります。
建物の頂上にあるガラス製のジオデシック・ドーム(球に近い正多面体)の形をした透明な網状構造は、この「ダリ劇場美術館」シンボルでもあり、フィゲラスの町を代表するのエンブレムになっています。
以前、観客がいた空間は空に向かって開放的な中庭に変わり、中央には「エステル女王」と名付けられた作品が鎮座しています。
この古いバルコニーの窓の前に、キャデラックと女性像 (La Reine Esther)ディオニュソス(ギリシア神話に登場する豊作とブドウ酒と酩酊(めいてい)の神)のヌードのオブジェは、かなりインパクトがあります。
この中庭には「Le Taxi pluvieux(雨降りタクシー)」という作品があり、来場者の驚きと笑いを誘います。
それは、側にある機械にコインを入れると、キャデラックの中にいる、男性マネキンに雨が降り注ぎます。
そして、中庭から気になっていた内観、ガラスのジオデシック・ドームの下には迫力満点の劇場ステージがありました。
365度、どの方向を見ても、シュルレアリスムの作品が向かい入れてくれます。
この舞台装置があるステージの床は赤レンガで埋め尽くされていますが、中央にあるの床下の石の部分には、84歳で永眠したダリのお墓があります。
そして、人を驚かす巨大な絵画には、トリックアートの様な施しがされています。
「18メートル離れるとリンカーン大統領の肖像に変容する海を見つめる裸のガラ」っと、いう長いタイトルを付けられた作品も圧巻です。
そして、この美術館には、エル・グレコを始め、ダリが個人的にコレクションしていた芸術家たちの作品も展示されています。
二階のギャラリーはダリの死後、ダリの友人でもあり「ダリ劇場美術館」の館長に就任した、カタルーニャ出身の芸術家アントニオ・ピトーの仕事場になっています。
そこで「ダリ劇場美術館」へ訪れたならば必ず押さえておきたいおすすめ見学作品ポイントをご紹介します。
ダリ作品の見どころとは?まずは、ダリの代表作 〜記憶の個室〜
「La persistencia de la memoria(記憶の個室)」(1931年)は、ダリが描いた作品の中でも初期の作品で、ぐにゃぐにゃに溶けて柔らかくなった3つの時計が非現実的なモチーフと組み合わさることで「シュルレアリスム(現実を超えた現実)」の代表作としてダリ作品を象徴する傑作として有名です。
この「溶けて柔らかくなった時計」の根元は、キッチンで最愛の妻、ガラが食べていたカマンベールチーズが溶けていく状態をずっと眺めていた時にインスピレーションを得たという経緯があります。
硬い時計と柔らかいカマンベールチーズという相反する二つのイメージを融合させる表現は、多くのダリ作品でみられるダブルイメージの手法です。
そして、背景にはダリ作品の中でもよく登場するスペイン・カタルーニャ地方のクレウス岬半島と3つの時計が合わさり、時間を支配したいという人々の欲求を表現しています。
現在はニューヨーク近代美術館に所蔵されているため「ダリ劇場美術館」では、現物は見られませんが、絨毯に描かれてありました。
ダリ作品のおすすめ観覧作品 〜バレエ舞台「ラビリンス」の背景幕〜
「バレエ舞台「ラビリンス」の背景幕」(1941年)は、劇場内でもひときわ大きく人々の関心を誘う超巨大絵画で、ニューヨークメトロポリタン歌劇場で上演された「迷宮」の舞台背景を拡大し描きなおした作品です。
絵の下にいる人たちと比べてみると、この絵がいかに大きいのかが分かるはずです。
ダリ作品のおすすめ観覧作品 〜18メートル離れるとリンカーン大統領の肖像に変容する海を見つめる裸のガラ〜
劇場ステージの壁面には、ダリの妻であり「ミューズ(女神・魅力的な女性)」であり、ダリのエージェントでもあった最愛の妻をモチーフにした「Gala nue regardant la mer qui à 18 mètres apparaît le president Lincoln(18メートル離れるとリンカーン大統領の肖像に変容する海を見つめる裸のガラ)」(1976年)があります。
タイトルの名の通り、近くで見ると、最愛の妻ガラの後ろ姿ですが、遠くから見るとアメリカ大統領リンカーンのモザイク肖像画が浮かび上がります。
この作品は、古典主義的な表現方法で精密なラインと明るい色彩のサイバネティックス(人工頭脳学)のコンセプトを組み込んだ、目の錯覚を生み出す未来志向のトリックアート作品として、驚きと発想の面白さを楽しめます。
ダリ作品のおすすめ観覧作品 〜回顧的な女性の胸像〜
「Buste de femme retrospectif(回顧的な女性の胸像)」(1933年)は、女性の胸から上を切り取ったブロンズ像に「古典解釈 ミレーの晩鐘」や「バゲット」など、ダリ作品に度々登場する象徴的なアイテムが加えられている彫刻作品です。
実は、1977年にブロンズ像として復元され12点作られているので、この美術館だけではなく、ニューヨーク近代美術館を始め、日本の福島県にある「諸橋近代美術館」でも鑑賞することができます。
ダリ作品のおすすめ観覧作品 〜焼いたベーコンのある自画像〜
「Autoportrait mou avec du lard grillé(焼いたベーコンのある自画像)」(1941年)は、ニューヨークのセント・レジスホテルの朝食の定番、フライドベーコンを見て、インスピレーションを受けた油彩画です。
何本もの松葉杖に支えられた解け落ちそうなダリの顔が描かれています。
ダリが自画像だと考えている、ぐにゃっとした柔らかく解け落ちそうな不定形な顔を何本もの松葉杖で支えられているのが印象的です。
そして、作品のタイトルが刻まれた台座と、その上には形のあるベーコンが、ダリの代表作「記憶の個室」と同じように、硬さと柔らかさの対比を表しています。
《解け落ちそうなダリの顔》
《そして、反対に硬いベーコンと台座》
ダリ作品のおすすめ観覧作品 〜球体のガラテア〜
「Galatée aux sphères(球体のガラテア)」(1952年)は、不連続で断片的な複数の宙に浮いた球体が、キャンバスの軸に沿って、驚異的な三次元の視覚と遠近感与える、抽象的でもあり、具象的でもある作品です。
第二次世界大戦の末期の1945年に、原爆が広島に投下されて以来ダリは、原子理論について関心を持ち始め、その思考欲を表し製作されたのがこの作品です。
各球体は亜原子粒子であり、絵画全体としては、ルネサンス美術と原子理論と物質の究極の不連続性を融合した表現「原子分裂理論」からインスピレーションした、神秘的な核の時代を代表していると言われます。
ちなみに、タイトルの「ガラテア(ガラテイア)」とは「乳白色の肌をもつ者」の意味があり、古代神話に登場する海に潜む海神ネーレウスの娘ネーレーイスの1人を表しています。
ダリ作品のおすすめ観覧作品 〜21世紀のパブロ・ピカソの肖像〜
「Portrait de Pablo Picasso au XXIe siècle(21世紀のパブロ・ピカソの肖像)」(1947年)は、ダリが自分にインスピレーションを与えてくれた芸術家の一人、パブロ・ピカソに敬愛して描かれた作品です。
決して、ピカソに対して、攻撃的でも、相手を無駄している訳でもなく、ピカソの作品から得られる知的なもの、醜さや感傷の高揚といった価値観を意味しています。
パッと見、ピカソをバカにいている様に見えるのは私だけでしょうか?苦笑
ダリ作品のおすすめ観覧作品 〜メイ・ウエストの部屋〜
「Visage de Mae West pouvant être utilisé comme appartement(メイ・ウエストの部屋)」(1934〜1935年)は「ダリ劇場美術館」の2階にある「メイ・ウエストの部屋」にあります。
この部屋は、ダリの主要作品を一箇所に集めた最大のコレクションがあり、来場者をシュールな世界へと引き込んでくれます。
そんなコレクションの中でも一番インパクトがある作品が、特定の視点からのみ現れる、アメリカのセックスシンボルであった女優メイ・ウェストの顔を、壁掛けの絵2枚で目、鼻を暖炉、そして、唇の形をしたソファーで表したリビングルームがかなり斬新で、見るものを驚愕させます。
《横からみると、なんだろ?っと不思議な空間》
《目になっている絵もよ〜く見るとこれだけで完成された絵画です》
この階段を上がると鏡があり、らくだのお腹の下から覗くと、髪の毛が備わった顔の完成形が見られます。
そして、このリビングルームの天井を見上げるのをお忘れなく!
なんと!天井を見上げると、逆さまに設置したバスタブや引き出しの開いたサイドテーブル、ランプなどを発見できます!
ダリ作品のおすすめ観覧作品 〜風の宮殿の天井装飾〜
「Plafond centrale du toit du Palais du Vent(風の宮殿の天井装飾)」(1972年)は、2階の「風の宮殿」と名づけられたゴージャスな広間の天井にあります。
ジョアン・マラガールの詩「L’Empordà」に触発されたもので、アンポウダンとトラモンターナのことを指しています。
ダリは、自分の人生において、様々な段階を直接的には表さず、別の物事に置き換えて表現する事をテーマとしているため、ガラの隣に自分をあえて無理な遠近法で描いています。
まるで空からダリとガラが舞い降りてくるようなバロック風のだまし絵です。
最後に、ダラはガラと自分自身を再び表し、これから出発する運命の船を思案しているそうです。
私は初め、ダヴィデ像で有名な彫刻家ミケランジェロによって描かれた、イタリアのバチカン宮殿内に建てられたシスティーナ礼拝堂の天井絵画に触発されたのかと思ってしまいました。
作者の思いや作品の経緯を知るとまた違った見方ができます。
ちなみに、奥の部屋にはダリの寝室が再現されています。
大蛇の尾っぽがモチーフの不思議なデザインのベッドも展示されています。
ダリが好き好んでいたであろう、装飾の数々は、ダリ自身の強烈で、繊細な個性を感じずにはいられなくなります。
幽霊が出そうでゆっくり眠れません(爆×爆)
ダリ作品のおすすめ観覧作品 〜セックスアピールの亡霊〜
1934年の「セックス・アピールの亡霊」は、水兵服姿の弓と大腿骨を手にした少年はダリ自身を表し、硬さと柔らかさが同居する巨大な怪物を見つめている様子が描かれています。
これは、ダリの幼少期の思い出を表現しています。
ダリの幼少期の風景であるキャップ・ド・クルーの岩のように正確なセクシュアリティのモンスターという、困難な知覚の感覚を具体的に表現したもので、死と復活の象徴である松葉杖を堂々と描いた存在感が特徴なのだとか。
実は、この作品は18×14cmと、と〜っても小さいです。
でも、描写はかなり細かく描かれているのにダリの写真の様な描写技術の高さに圧倒されます。
あとがき
「ダリ劇場美術館」を訪れてみて、今までダリについて、断片的なイメージしか持っていなかった自分に気づきました。
ダリ作品に触れ、ダリ作品に対する思想を知り、色々と発見する事が出来ました。
何よりもダリ作品の象徴でもある「記憶の個室」以外の作品を知り、幼少期から晩年までの作品の表現技法の数々、そして、若き頃から段々と写真の様に美しい絵画にタッチが変わっていく様子。
素朴なスケッチの様な素描から、個性豊かな現実にはあり得ない様な世界観の素描まで、どれをとってもクオリティが高くてびっくりします。
日本の漫画家さんにもいそうなファンタジーな素描。
個性的な、ちょっと頭おかしい作品ばかりかと思いきや、王道な躍動感ある絵画もあり。
この美術館内で発見できる、ダリの青年時代に印象主義、キュビズム、新古典主義などに影響を受けた作品の数々も観覧できます。
そして、その後、シュルレアリスム運動に探求し、シュルレアリストとして確固たる地位を確立していった事が分かる作品も多く展示されています。
そして、最後に私がダリの作品の中で、印象に残ったのは、奇抜で個性的な作品ではなく、目の錯覚を利用した、だまし絵や鏡を用いた多次元の世界を表した、ステレオグラフ、アナモルフィック・アートを展示する部屋でした。
平面に描かれた一見不明瞭な絵や風景画が円柱の鏡に反射されることによって、肖像画などの正確な絵画を映し出す驚愕のステレオグラフです。
目の焦点を意図的に前後にずらし、鏡を使い2つの絵を合わせる事で、左右の絵を別々の目で見る事で立体的に見る不思議なアート作品です。
お次は、ボトルに絵を反射さえた作品。
この様に、定番のダリワールド以外に、ダリの生涯に渡って生み出した多くの作品の中から、あなたの好きな作品を見つけられると良いですね。
ここでは触れませんでしたが、日本絵画にも興味を持っていたため、日本の掛け軸などの絵も展示されています。
室内が暗いのでハッキリとした作品を見るのにはかなり集中しないといけませんが、ご興味のある方は是非!
●住所:Gala-Salvador Dalí Square 5 E-17600 Figueres Catalonia
●電話番号 +34 972 677 500
●入場料金:大人14€ / 学生・シニア(65歳以上の年金受給者)9€
※料金にはダリ宝石美術館の入場料も含まれます
※グループ割引あり
※2021年現在
●営業時間:都合により変更あり(詳しくは公式ホームページより)
●休館日:都合により変更あり(詳しくは公式ホームページより)
●アクセス方法:公共交通機関をご利用の場合、フィゲラスには駅が2つあります。
・バルセロナから特急電車AVEが到着するFigueres-Vilafant(フィゲラス・ヴィラファント )駅からは徒歩約20分
・バルセロナから快速電車等が到着するFigueres(フィゲラス)駅からは徒歩約15分
なんだかんだ言って、亡くなった兄はダリにとってのキーパーソンだったのかもしれないですね!